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第1章:はじめに
庭づくりを楽しむ人々の間で、近年ますます人気を集めているのが「ボーダーガーデン」です。
特に、宿根草(しゅっこんそう)を中心に植栽されたボーダーガーデンは、四季折々の彩りを長く楽しめる点で多くのガーデナーに支持されています。
ボーダーガーデンとは?
ボーダーガーデンとは、敷地の境界や壁沿い、歩道の片側などに帯状(ボーダー状)に植物を配置してつくる花壇のことです。
視線の誘導や空間の区切りとしても機能し、デザイン性の高い庭づくりが可能になります。
特徴的なのは、植物の高さを活かして前・中・後列の3層構造にレイアウトする点です。これにより、自然な奥行きと立体感が生まれ、庭全体に動きが出ます。
宿根草を使うメリット
宿根草とは、一度植えると毎年繰り返し花を咲かせる多年草のことです。
一年草のように毎年植え替える必要がなく、コストパフォーマンスが高いのが大きなメリット。種類も豊富で、開花時期や草丈、葉の形や色なども多様なため、ボーダーガーデンとの相性は抜群です。
この記事で紹介する内容
本記事では、次のようなステップでボーダーガーデン作りを解説していきます。
ボーダーガーデンの基本構造
宿根草の選び方とおすすめ品種
花壇レイアウトの実践的な方法
初心者にもできるデザイン例
宿根草の育て方と管理のポイント
初めての方でも楽しく、美しくガーデンづくりができるよう、具体的で実用的な内容を心がけてお届けします。
第2章:ボーダーガーデンの基本構造
美しいボーダーガーデンをつくるには、単に植物を並べるのではなく、構造的なレイアウトの考え方がとても重要です。
特に宿根草を使う場合、草丈や開花期が年ごとに変化することもあるため、しっかりとした設計が長く楽しめる花壇づくりの鍵となります。
三層構造が基本
ボーダーガーデンの基本は、前列・中列・後列の3層構造です。それぞれの役割を意識して配置すると、全体に奥行きが生まれ、見る人の視線を自然に誘導できます。
前列(手前)
背丈が低い植物(高さ20〜40cm程度)を配置。足元を彩る「縁取り」としての役割があり、細かな葉や花が多いと、柔らかい印象になります。
例:アジュガ、アルメリア、ヒメツルソバ中列(中央)
中程度の高さ(40〜80cm程度)の植物を配置。季節ごとのメインカラーを担う場所で、宿根草の中心的な花をここに植えると、華やかさが増します。
例:エキナセア、ルドベキア、ペンステモン後列(奥)
背丈が高い植物(80cm以上)や構造的な要素(グラス類、アーチ、支柱など)を配置します。背景としての役割があり、視覚的な「壁」として空間を引き締めます。
例:デルフィニウム、フロックス、ミソハギ
色と高さのバランスをとる
宿根草の魅力の一つは、豊富な花色とフォルムです。しかし、好きな色ばかりを並べてしまうと、全体がちぐはぐな印象になることもあります。
色彩計画を立てる際は以下のポイントを意識しましょう:
主役色(テーマカラー)を1〜2色に絞る
周囲の建物やフェンスの色と調和させる
花だけでなく葉の色や質感にも注目する(例:シルバーリーフ、斑入り葉など)
また、植物の高さは階段状に配置するのが理想です。背の高い植物が前列に来てしまうと、後ろが隠れてしまい、せっかくのデザインが見えなくなってしまいます。
環境条件を考慮した配置
植物はそれぞれ、日照・風通し・水はけなどに対する好みがあります。配置の際には、次のような点にも注意しましょう:
日当たりのよい場所:ラベンダー、サルビア、ガウラなど
半日陰でも育つ:ホスタ(ギボウシ)、アスチルベ、ヒューケラなど
乾燥に強い種類は排水のよい場所に、湿気が好きな種類はやや低い場所に配置するのが理想です。
このように、ボーダーガーデンは見た目だけでなく、構造と環境の調和が重要です。次の章では、実際に使える宿根草の選び方とおすすめ品種をご紹介します。
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第3章:宿根草の選び方とおすすめ品種
ボーダーガーデンに宿根草を取り入れる際、ただ好みの花を選ぶだけではなく、草丈・開花時期・管理のしやすさ・環境への適応力をバランスよく考えることが大切です。
この章では、宿根草の基本的な選び方と、春・夏・秋それぞれの季節でおすすめの品種を紹介します。
宿根草の特徴と選び方のポイント
宿根草は、一度植えれば毎年繰り返し育ち、花を咲かせる多年草です。地上部が枯れても地下の根が生き残り、春には再び芽吹いてくれます。
選ぶときのポイントは以下のとおりです:
開花時期をバラけさせる
→ 同じ時期にすべてが咲くのではなく、春〜秋までリレーのように咲くよう調整すると、長期間楽しめます。草丈のバランスを考慮する
→ 前列〜後列の三層構造を意識して、低・中・高をバランスよく選びましょう。手入れのしやすさ
→ 初心者には、病害虫に強く、切り戻しや株分けがしやすい品種がおすすめです。
季節ごとのおすすめ宿根草
【春に咲くおすすめ宿根草】
| 品種名 | 特徴 | 草丈 |
|---|---|---|
| プルモナリア | 斑入りの葉も美しく、半日陰向き | 20〜30cm |
| ヒューケラ | カラフルな葉色で通年楽しめる | 20〜40cm |
| アネモネ・ブランダ | 早春に咲く可憐な花 | 15〜25cm |
【夏に咲くおすすめ宿根草】
| 品種名 | 特徴 | 草丈 |
|---|---|---|
| エキナセア | 長期間咲き、花もちが良い | 60〜90cm |
| ガウラ | 風に揺れる軽やかな花姿が特徴 | 70〜100cm |
| サルビア・ネモローサ | 紫系の花が花壇を引き締める | 40〜60cm |
【秋に咲くおすすめ宿根草】
| 品種名 | 特徴 | 草丈 |
|---|---|---|
| セダム(ミセバヤなど) | 多肉質の葉で乾燥に強い | 30〜40cm |
| フロックス(宿根) | 晩夏〜秋にかけて鮮やかに咲く | 70〜100cm |
| ミソハギ | 和風にも洋風にも合う落ち着いた花 | 80〜120cm |
初心者にも扱いやすい宿根草3選
ヒューケラ:日陰にも強く、葉のバリエーションが豊富。花が少ない時期も葉で楽しめる。
エキナセア:丈夫で病害虫に強く、夏の主役にぴったり。切り花にも。
アジュガ:グランドカバーとして優秀で、春に紫の小花を咲かせる。ほぼ手間いらず。
宿根草は、一度植えたら何年も楽しめる「生きた資産」ともいえる存在です。次章では、それらをどのように美しくレイアウトするか、実践的なテクニックを紹介します。
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第4章:花壇レイアウトの実践テクニック
宿根草を使ったボーダーガーデンでは、見た目の美しさだけでなく、季節ごとの変化や維持のしやすさを考えたレイアウトが大切です。
ここでは、色彩や構造、開花時期などを意識した実践的なテクニックを紹介します。
1. 色彩計画の立て方:カラーリズムと統一感
花壇の印象を大きく左右するのが「色の使い方」です。
適当に好きな色を並べると、ごちゃごちゃした印象になってしまいがちです。以下のようなルールを使うと、まとまりのあるデザインになります。
▶ カラーリズムを意識する
色のリズムとは、「同じ色または同系色をリズムよく配置すること」
例えば紫系なら、前列にアジュガ、中列にサルビア、後列にフロックスといったように、繰り返しのパターンを作ると、安定感と統一感が出ます。
▶ カラースキームの例
モノトーン配色(白・グレー・シルバー)→ 洗練された印象
類似色配色(青・紫・ピンク)→ やさしい印象
補色配色(黄×紫、赤×緑など)→ 元気で華やかな印象
▶ 葉色でアクセントをつける
葉の色も大事な要素です。シルバーリーフ(ラムズイヤー、アーティチョーク)や、銅葉(どうよう)(ヒューケラ、ダリアの一部)を使うと、色の対比や引き締め効果が生まれます。
2. 開花時期のバランスを取る
宿根草は開花期が限られているため、一年中美しく保つには、時期の異なる品種を組み合わせることが重要です。
▶ 3つの開花グループで考える
早春〜初夏(3〜6月)
盛夏(7〜8月)
晩夏〜秋(9〜11月)
それぞれのグループから前列・中列・後列を1〜2種ずつ選ぶと、春から秋まで途切れない花壇を作ることができます。
▶ 宿根草+球根・一年草の組み合わせも有効
春先は宿根草がまだ育ちきっていないため、チューリップやスイセンなどの球根植物、ジニアやペチュニアなどの一年草を組み合わせて、空白の時期をカバーするのもよい方法です。
3. リズム感と自然な流れを作る植栽デザインのコツ
ボーダーガーデンの魅力は、まるで自然の風景の一部のような「流れるようなライン」にあります。以下の点を意識すると、動きと立体感のある植栽になります。
▶ 群植と点植の使い分け
群植(同じ植物を数株まとめて植える)→ ボリューム感と安定感
点植(少数をアクセント的に配置)→ 変化とリズム感
▶ 曲線や斜め配置を意識する
花壇のラインを緩やかなカーブや斜めのラインにすることで、自然な視線誘導ができます。直線だけだと無機質になりがちなので、あえて「不規則」を取り入れるのもポイントです。
▶ 足元の処理にもひと工夫
前列にグランドカバーを植えることで、土の見えない引き締まった印象になります。アジュガ、リシマキア、クリーピングタイムなどがオススメです。
このように、ボーダーガーデンのレイアウトは「色・高さ・時期・形」をバランスよく組み合わせることで、自然で美しい風景が生まれます。
次章では、実際のレイアウト例をいくつかご紹介します。
初心者でも真似できる実用的なパターンを取り上げますので、お楽しみに。
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第5章:実例紹介:初心者にもできるレイアウトパターン
ここでは、初心者でも取り入れやすく、かつデザイン性の高い宿根草中心のボーダーガーデンレイアウト例を3つご紹介します。
それぞれのスタイルに応じたポイントや使用植物も具体的に解説しますので、ご自身の庭に合ったスタイルを探してみてください。
1. ナチュラルスタイルの花壇
特徴
自然の草原や山野草の風景を再現したような、柔らかく動きのあるレイアウト。不規則な配置と風に揺れる花が特徴で、野趣あふれる雰囲気が魅力です。
使用例(前→中→後列)
前列:アジュガ、ヒューケラ、クリーピングタイム
中列:ガウラ、ルドベキア、ペンステモン
後列:エキナセア、ススキ、フロックス
ポイント
曲線的な花壇ラインで「自然らしさ」を演出
草丈や花色にややムラを持たせることで、よりナチュラルな印象に
風に揺れるタイプの植物(ガウラやススキなど)を多めに配置
2. フォーマルスタイルのボーダー
特徴
きちんと整った印象を与える、左右対称や直線ラインが特徴のレイアウト。欧風ガーデンやクラシカルな住宅によく合います。
使用例(前→中→後列)
前列:アリッサム、ラベンダー ‘ヒドコート’
中列:サルビア・ネモローサ、デージー、カンパニュラ
後列:デルフィニウム、リグラリア、宿根バーベナ
ポイント
花色を2〜3色に抑えて統一感を出す(例:白×青×紫)
植物は高さ順に整然と並べる
刈り込みのしやすい品種や形の整った品種を選ぶと美しさを保ちやすい
3. 小スペース向けのシンプル花壇
特徴
玄関前や塀の隅、幅1メートル程度の狭いスペースでも楽しめるレイアウト。植物の種類を厳選し、メンテナンスも楽に済ませたい方におすすめです。
使用例(前→中→後列)
前列:アジュガ、リシマキア・ヌンムラリア
中列:ヒューケラ、ガザニア
後列:ミソハギ、ユーフォルビア ‘カラキアス’
ポイント
小スペースでは色数を絞ることがまとまりの鍵(例:白×緑×1アクセントカラー)
宿根草は手入れが楽な品種を中心に
見せたい方向(通路側、玄関側)に向かって、斜め配置で奥行きを演出
レイアウトに困ったら“テーマ”を決める
迷ったときは、「テーマ」をひとつ設定してみましょう。たとえば:
「地中海風ハーブガーデン」(ローズマリー、ラベンダー、セージ)
「ピンクだけの花壇」(ヒューケラ‘パリ’、エキナセア‘パリダ’、ペンステモン‘ピンクパッション’)
「和モダン」(ギボウシ、ミソハギ、トクサ)
テーマを持つことで、選ぶ植物や色の統一が自然とでき、自分らしい庭を作りやすくなります。
次章では、これまで紹介した宿根草たちをどう管理して育てていくかを解説します。年間の作業スケジュールやメンテナンスのコツ、注意点などを具体的にお伝えします。
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第6章:宿根草の管理とメンテナンス
宿根草を使ったボーダーガーデンは、植えっぱなしでも毎年楽しめるのが魅力ですが、適切な管理を行うことで、より美しく、健康的な状態を長く保つことができます。
この章では、年間を通した基本的なメンテナンスの流れと、宿根草特有の注意点について詳しくご紹介します。
1. 年間スケジュールで見る管理のポイント
【春(3〜5月)】
新芽の確認と古葉の除去:冬越しした株の周囲に残っている枯れ葉を取り除きます。
肥料の施し:元気に育つよう、緩効性の化成肥料や堆肥を根元に撒きましょう。
植え替え・株分けの適期:株が混み合ってきた宿根草は、この時期に株分けすると更新されて元気になります。
【夏(6〜8月)】
切り戻し:花が終わったら花茎を早めに切り戻し、次の開花や株の充実を促します。
水やりと乾燥対策:基本は自然任せでOKですが、極端な乾燥が続く場合は朝か夕方にたっぷりと。
風通しの確保:混み合っている場所は間引いて蒸れや病気の予防を。
【秋(9〜11月)】
宿根草の整理:枯れ始めた植物は順次カット。種を取る場合は採種後に剪定を。
株の保護:寒さに弱い宿根草には腐葉土やワラでマルチングすると冬越しが楽になります。
新規植栽のラストチャンス:秋は根がよく張る時期なので、植え替えや追加植栽にも最適です。
【冬(12〜2月)】
休眠期の管理:地上部は枯れても根は生きているので、必要以上に触らず、霜や雪対策を。
花壇の計画:この時期は来年に向けてのデザイン変更や品種選びをじっくり行える貴重な時間です。
2. 害虫対策と病気の予防
よく見られる害虫と対応法
| 害虫名 | 症状 | 対策 |
|---|---|---|
| アブラムシ | 茎や葉に密集して吸汁 | 早期発見・手で除去 or 植物性殺虫剤 |
| ナメクジ・カタツムリ | 葉をかじる | 夜間に捕殺、忌避剤の使用 |
| ハダニ | 葉が黄変・白斑 | 葉裏の水やり、必要に応じて薬剤散布 |
病気の例と予防法
うどんこ病:葉が白く粉を吹いたようになる → 風通し改善、水はねを避ける
灰色カビ病:高湿度で発生 → 咲き終わった花を放置しない、密植を避ける
病気や害虫の多くは、日当たり・風通し・排水の悪い環境で起きやすくなります。日頃からの環境整備が最大の予防策です。
3. 宿根草の冬越し対策
宿根草は基本的に寒さに強いものが多いですが、品種によっては防寒が必要です。
寒さに弱い品種(例:ガウラ、フロックスの一部)は、根元に腐葉土を厚めに敷く、鉢植えなら軒下へ移動。
地植えのものは、雪が積もる地域ではワラや不織布で覆うと安心です。
4. 株分けと更新
年数が経つと、宿根草の株が中心から枯れ込み、花つきが悪くなることがあります。そんなときは「株分け」を行いましょう。
タイミング:春または秋(休眠期前後)
方法:スコップで株を掘り上げ、根を2〜4つに分けて、元気な部分だけを植え直す
効果:若返りと株の更新、他の場所への増殖にもつながる
このように、宿根草の管理は「こまめに、でも負担なく」が基本です。植物のリズムを知り、少しずつ手をかけることで、年々美しくなる庭が手に入ります。
次はいよいよ最終章、「まとめ」をご紹介します。これまでの内容を振り返り、初心者へのアドバイスや今後のステップもお伝えします。
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第7章:まとめ
宿根草を活用したボーダーガーデンは、四季を通じて彩りが楽しめるだけでなく、管理の手間も抑えられるという点で、ガーデニング初心者にもおすすめのスタイルです。
本記事では、基本構造から実践テクニック、具体的なレイアウト例や管理方法までをご紹介してきました。
ボーダーガーデンの魅力を振り返って
デザイン性:前・中・後列の三層構造で、立体的かつ奥行きのある花壇が作れる
機能性:帯状に植えることで、通路沿いや境界線などのスペースも有効活用できる
持続性:宿根草を中心に植えれば、毎年植え替えの手間が省け、長期的に楽しめる
宿根草は見た目の華やかさだけでなく、繰り返し花を咲かせる生命力や、季節の変化に応じた表情の変化も魅力のひとつです。
初心者へのアドバイス
これからガーデンづくりを始めたい方に向けて、いくつかのポイントをまとめます。
はじめは小さなスペースから始める
→ 花壇の一角や鉢植えでも、ボーダー風のレイアウトは可能です。3〜5種の宿根草で構成する
→ 品種を絞ることで統一感が生まれ、管理も楽になります。失敗を恐れずに、毎年少しずつ改良する
→ ガーデニングは「育てる+楽しむ」が基本。失敗も経験として次につながります。
自分だけのガーデンを作ろう
今回ご紹介した基本をもとに、自分好みの色やスタイルで植物を組み合わせれば、世界に一つだけのオリジナルガーデンが完成します。
時間とともに成長し、毎年変化する庭は、まさに「育てる風景」といえるでしょう。
季節の移ろいと共に変化する庭を眺めることは、日々の癒やしにもなります。ぜひ、宿根草で彩るボーダーガーデンづくりに挑戦してみてください。
おわりに
宿根草とボーダーガーデンは、ガーデニングを続けるほどその奥深さと楽しさを実感できる組み合わせです。本記事が、あなたの庭づくりの第一歩となれば幸いです。
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