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「鶏糞は良い肥料」と耳にしたことがあっても、
「そのまま使っていいの?」「臭いが心配…」「どうやって発酵させるの?」
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
実は、鶏糞は適切に処理すれば、非常に優れた有機肥料になります。窒素・リン酸・カリウムを豊富に含み、野菜や植物の生育をグンと促進。
しかも、家庭で簡単に「自家製堆肥」として作ることができるんです。
本記事では、初心者でも無理なく始められる鶏糞堆肥の作り方を、基礎から丁寧に解説。
堆肥づくりのコツや使い方、よくある疑問にも答えながら、自然の力を活かした土づくりの魅力をお伝えします。
「手作りの堆肥で、元気な野菜を育てたい」
そんなあなたに、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
第1章:鶏糞堆肥とは?
鶏糞の特徴と栄養価
鶏糞(けいふん)は、その名の通りニワトリの排泄物で、有機肥料として非常に栄養価が高いことで知られています。
特に、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)の三大栄養素をバランスよく含んでおり、植物の生育にとって理想的な肥料原料です。
乾燥した鶏糞には、以下のような成分が含まれています(目安):
窒素(N):2~4%
リン酸(P):3~5%
カリウム(K):1~2%
特に窒素が多く、植物の葉や茎の成長を促進する効果が高いため、葉物野菜や成長期の作物には最適な肥料と言えるでしょう。
なぜ鶏糞が堆肥に適しているのか
鶏糞はそのままでは強い刺激性があり、根焼け(植物の根がダメージを受ける状態)を引き起こすリスクがあります。
しかし、発酵・熟成させることで刺激が和らぎ、植物にとって安全で吸収しやすい状態に変化します。
鶏糞が堆肥に向いている主な理由は以下の通りです:
発酵が早く進む(水分と空気管理をすれば1〜2ヶ月で完熟)
有機物が多く、微生物の活動を活発にする
C/N比(炭素と窒素の比率)が低く、分解が早い
市販の鶏糞との違い(生 vs 熟成)
ホームセンターなどで売られている鶏糞には、「乾燥鶏糞」「発酵鶏糞」「完熟鶏糞」などの種類があります。
乾燥鶏糞:水分を飛ばして軽量化しただけで、発酵していないもの。刺激が強く、使い方に注意が必要です。
発酵鶏糞:発酵が始まっている段階のもの。臭いは軽減されているが、まだ不安定。
完熟鶏糞:しっかりと発酵が完了したもの。臭いもほぼなく、安心して使えます。
自作する場合は、「完熟鶏糞」に近い状態までしっかり発酵・分解を進めることがポイントです。
第2章:鶏糞堆肥を作る前に知っておきたい基礎知識
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鶏糞堆肥はとても栄養価の高い有機肥料ですが、作り方を間違えると、作物に悪影響を与えたり、ご近所トラブルの原因になったりすることもあります。
この章では、鶏糞堆肥作りを始める前に知っておくべき基本的なポイントを解説します。
鶏糞はそのまま使えない理由
鶏糞は、「未発酵のままでは強すぎる肥料」です。
そのまま土に混ぜると、以下のような問題が起こりやすくなります:
根焼け:鶏糞の強いアンモニアが植物の根を傷める
土壌のバランス崩壊:急激なpH変化で微生物の活動が阻害される
悪臭の発生:発酵が不十分だと悪臭が残りやすく、周囲への迷惑になる
このため、鶏糞は必ず発酵・熟成させてから使用することが原則です。
発酵と完熟の意味
堆肥化では、「発酵」と「完熟」という2つのプロセスが重要です。
発酵(一次分解):微生物が鶏糞中の有機物を分解し、熱が発生する。内部温度が60℃以上になることもあり、病原菌や雑草の種も死滅します。
完熟(二次分解):活発な発酵が終わった後、ゆっくりと安定した状態に変化していく。刺激のない、使いやすい堆肥になります。
完熟していない鶏糞堆肥は、見た目では判断が難しいこともありますが、臭いが強い・温度が高い・形が原型を留めているといった状態は未完熟のサインです。
注意すべき点(臭い、アンモニア、雑菌)
鶏糞は取り扱いを誤ると、強烈な悪臭や衛生的な問題を引き起こす可能性があります。以下の点に注意しましょう。
臭い対策:通気性を確保し、適度な水分量(50~60%)を保つことで、腐敗臭を防げます。
アンモニア発生:高温多湿すぎるとアンモニアが発生しやすく、周囲に強烈な刺激臭を放ちます。
雑菌・病原菌の処理:発酵温度をしっかり60℃以上に上げることで、多くの病原菌は死滅します。
また、作業中はマスク・手袋の着用をおすすめします。堆肥作りは自然との共生作業ですが、衛生面の管理はとても重要です。
第3章:鶏糞堆肥の作り方【基本編】
この章では、家庭でも実践できる鶏糞堆肥の基本的な作り方を、ステップごとに詳しく解説します。
鶏糞は強力な有機資源ですが、扱いを誤ると臭いや失敗の原因になるため、手順通りに丁寧に行うことがポイントです。
ステップ1:材料の準備
鶏糞堆肥作りには以下の材料が必要です。
必要な材料
鶏糞(生または乾燥):肥料の元になる主原料
炭素源(C):わら、落ち葉、もみ殻、新聞紙、段ボールなど
水:適度な水分調整に使います
鶏糞は窒素分が豊富な「窒素源(N)」、わらなどは炭素分が多い「炭素源(C)」です。このバランスが堆肥の出来を大きく左右します。
ステップ2:適切な配合比率(C/N比)を意識する
堆肥づくりでは、C/N比(炭素:窒素の比率)が重要です。理想は 25〜30:1。
鶏糞堆肥の目安比率
鶏糞:1
炭素源(例:わら、もみ殻、落ち葉など):2〜3
たとえば、バケツ1杯の鶏糞に対して、2〜3杯分の炭素源を混ぜるのが基本的な配合です。炭素源が足りないと臭いやアンモニア発生の原因になります。
ステップ3:水分調整
発酵には水分も必要です。理想的な含水量は50〜60%程度です。
簡単な水分チェック方法
手でギュッと握る → 軽く湿っていて、水が垂れない程度がベスト
水分が多すぎる → ベチャベチャ、空気が入らず悪臭の原因に
水分が少なすぎる → 微生物が活動できず、発酵が進まない
水分が多いと感じたら、もみ殻や段ボールなど吸水性のある炭素源を追加しましょう。
ステップ4:積み上げて発酵させる
材料が混ざったら、堆肥を作る場所に積み上げます。直射日光・雨の当たらない場所を選びましょう。ブルーシートやコンポスト容器を使うのもおすすめです。
山の高さは50~100cm程度
風通しのよい場所にする
表面はブルーシートや米袋で軽く覆う(雨・乾燥防止)
発酵初期は熱が出るため、内部温度は50~70℃まで上がります。
ステップ5:切り返しと発酵期間
発酵を均等に進めるため、1~2週間に1回「切り返し」(上下を混ぜ返す作業)を行います。これにより、
酸素が行き渡り、好気性発酵が進む
全体の分解が均一になる
温度のムラをなくす
発酵期間は気温や環境によりますが、1〜2ヶ月ほどで完熟に近づきます。
ステップ6:完熟の見分け方
以下のような状態になれば「完熟」の目安です:
臭い:刺激臭がなく、森の土のような香り
見た目:鶏糞やわらの原型がなくなり、黒っぽく均一な見た目
温度:常温(30℃以下)に落ち着く
手触り:しっとりしながらも手にべとつかない
完熟していない堆肥を使うと、植物に害を与えることがあるため、慎重に確認しましょう。
第4章:より良い鶏糞堆肥を作るためのコツ
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基本的な作り方をマスターしたら、次は堆肥の質をさらに高める工夫に挑戦してみましょう。
この章では、臭いや失敗を防ぎながら、発酵を効率よく進めるための実践的なテクニックをご紹介します。
コツ①:通気性を高める工夫
堆肥作りでは「空気(酸素)」が欠かせません。通気性が悪いと、嫌気性発酵(空気のない状態)が起き、悪臭や腐敗の原因になります。
通気性アップの方法
粗めの炭素源を使う(例:もみ殻、剪定枝、藁)
→ 細かい落ち葉や新聞紙よりも、空気が通りやすくなります。底に通気層を作る
→ 地面に直置きせず、下に竹や枝を敷くことで、空気が入りやすくなります。堆肥をドーム型に積む
→ 中央に空気がたまりやすくなり、自然な換気が生まれます。
コツ②:発酵促進剤を活用する
より早く安定した発酵を進めたい場合は、発酵促進剤(EM菌、米ぬか、油かすなど)の使用がおすすめです。
よく使われる促進剤
EM菌(有用微生物群):微生物の力で分解をスムーズに進める
米ぬか:微生物のエサとなり、発酵を促進
油かす:発酵のエネルギー源になるが、使いすぎると臭いや過発酵の原因になるため注意
添加する量は、鶏糞の5〜10%が目安です。入れすぎに注意し、全体によく混ぜましょう。
コツ③:雨対策と温度管理
鶏糞堆肥は水の量と温度管理が非常に重要です。
雨対策
雨ざらしにすると、栄養分が流れてしまい、発酵も不安定になります。
屋根付きの場所、またはブルーシート・防水シートでカバーするのが理想的です。
温度管理
発酵の目安は50〜70℃程度。これ以上になると微生物が死んでしまうため、定期的に温度を測ると安心です。
温度が上がらない場合は、炭素源を追加して切り返すことで発酵を刺激できます。
コツ④:自然の微生物の力を活かす
自然界の微生物は非常に優秀です。人工的な添加物を使わなくても、空気、水、炭素源のバランスを整えれば、微生物は自然と働き始めます。
おすすめは、森の表層の腐葉土や古い堆肥を少量混ぜること。これにより、すでに活発な微生物が種菌のような働きをして、発酵を助けてくれます。
このような工夫を取り入れることで、より高品質で安全な鶏糞堆肥を作ることができます。慣れてきたら、自分なりの配合や工夫を加えて「オリジナル堆肥」に育てていくのも楽しいですよ。
第5章:鶏糞堆肥の使い方と注意点
完成した鶏糞堆肥は、家庭菜園から本格的な農業まで、さまざまな場面で活用できます。
ただし、使い方を誤ると植物にダメージを与えることもあるため、適切な使用法と注意点をしっかり理解することが大切です。
どんな野菜・植物に向いているか
鶏糞堆肥は、窒素が豊富なため、特に葉物野菜や生育旺盛な作物に向いています。
鶏糞堆肥が向いている作物
小松菜、ほうれん草、チンゲンサイなどの葉物野菜
トマト、ナス、ピーマンなどの果菜類
トウモロコシ、キャベツ、ブロッコリーなどの大型野菜
花壇植物(キク、マリーゴールドなど)や芝生にも活用可能
ただし、根菜類(大根、ニンジンなど)には注意が必要です。窒素が多すぎると、根が肥大せず、形が乱れる原因になります。
施用時期と量の目安
完熟した鶏糞堆肥は、植え付けの2週間前を目安に、あらかじめ土にすき込んでおくのが基本です。
使用量の目安(1㎡あたり)
| 作物の種類 | 使用量(完熟堆肥) |
|---|---|
| 葉物野菜 | 1.5~2kg |
| 果菜類 | 2~3kg |
| 根菜類 | 1kg前後(少なめに) |
※元肥(植え付け前)として使用し、追肥には化成肥料や液肥を使うのが一般的です。
使用時の注意点
1. 完熟堆肥のみを使用する
未完熟の堆肥は、根焼けや病害虫の温床になりやすいため、温度が下がり、臭いがなくなってから使用してください。
2. 入れすぎに注意
鶏糞堆肥は栄養価が高いため、入れすぎると肥料過多になります。葉ばかり茂って実がつかない、病気になりやすい、といった問題が起こることがあります。
3. 酸性化の予防
鶏糞はやや酸性に傾く性質があるため、苦土石灰や草木灰などのアルカリ性資材を適宜混ぜて、土壌のpHバランスを保つことが大切です。
4. 定植前のガス抜き
発酵直後の堆肥を使用した場合、アンモニアなどのガスが土中に残ることがあります。必ず1〜2週間寝かせてから作物を植えましょう。
鶏糞堆肥は、正しく使えば、化学肥料に頼らずとも健康な土づくりが可能になります。自然の循環を活かす意味でも、地球にもやさしい肥料として活用していきましょう。
第6章:よくあるQ&A(初心者の疑問に答える)
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鶏糞堆肥の作り方や使い方について、初心者の方からよく寄せられる疑問をQ&A形式でわかりやすく解説します。
Q1. 生鶏糞と完熟堆肥の見分け方は?
A:臭い・見た目・温度で判断できます。
完熟堆肥は、腐葉土のような香りがし、刺激臭はありません。
色は黒~こげ茶色で、鶏糞やわらの原型はほとんど残っていません。
発酵中のものは内部温度が50℃以上になりますが、完熟すると**常温(30℃以下)**に戻ります。
※自信がない場合は、植える前に小さなテスト区画で試すのも安心です。
Q2. 臭いがきついけど大丈夫?
A:強いアンモニア臭がある場合は、未完熟の可能性があります。
強烈な臭いは嫌気性発酵(酸素不足)や過剰な水分が原因です。
臭いが気になるときは以下を試しましょう:
炭素源(わら、もみ殻など)を追加
よく切り返して通気を確保
シートを開けて乾燥させる
※発酵が進むと臭いは自然とおさまります。近隣への配慮として、初期はなるべく屋外で作業し、風下に注意しましょう。
Q3. 室内や家庭菜園でも作れる?
A:可能ですが、いくつかの工夫が必要です。
室内(ベランダなど)の場合
密閉型のコンポスターや堆肥箱を使えば、臭いを抑えつつ発酵できます。
小規模で始めるなら、乾燥鶏糞+段ボール堆肥法も有効です。
ベランダでは通気性・排水性に注意し、雨避けと虫対策を徹底しましょう。
家庭菜園での活用
土作りの一環として、秋〜冬にすき込んで春に利用するなど、時間に余裕を持って使うのがおすすめです。
土のリサイクルにも活躍します。
Q4. 冬でも発酵できますか?
A:できますが、時間がかかるため工夫が必要です。
外気温が低いと、微生物の働きが鈍くなり、発酵速度が落ちます。
冬に発酵させるには:
厚めに積み上げて断熱性を高める
シートで覆って保温
発酵促進剤(米ぬかなど)を加える
ただし、春や秋に比べて完熟まで2倍以上の期間がかかることもあるため、気長に待ちましょう。
これらのQ&Aは、初心者のつまずきやすいポイントをカバーしています。初めての方も失敗を恐れず、少しずつ慣れていくことで、堆肥作りが日常の一部として楽しめるようになります。
第7章まとめ:鶏糞堆肥の作り方の基本と成功のポイント
この記事では、「鶏糞 堆肥 作り方」に関する基本的な知識から、実践的な作り方・活用法・注意点まで、段階的に詳しく解説してきました。
ここで、堆肥づくりの流れとポイントを改めて振り返りましょう。
✅ 鶏糞堆肥の基本ポイントまとめ
鶏糞は必ず発酵・熟成させること
→ 生のままでは刺激が強く、作物に害を与える可能性あり適切なC/N比(炭素:窒素)を意識する
→ わら、もみ殻、落ち葉などを混ぜてバランスを取る発酵を成功させるには空気・水分・温度の管理がカギ
→ 切り返しで酸素を供給、水分は50〜60%、温度は50〜70℃を目安に臭いやアンモニア臭は、通気と炭素源の追加で対策可能
→ 微生物が働きやすい環境を整えることが最も重要完熟のサインを見極めてから使用すること
→ 温度が常温に下がり、見た目が黒く、臭いがなくなればOK使い方を守れば、多くの野菜や植物に効果抜群!
→ 特に葉物・果菜類に向いており、土壌改良にも効果あり
✅ 鶏糞堆肥作りの魅力とは?
コストが安い:市販の肥料を買わずに済む
環境にやさしい:資源を循環させるエコな取り組み
土が元気になる:微生物が増えて、土の力がよみがえる
堆肥作りは「待つ」ことが必要な作業ですが、その分、自然の力を実感できる奥深い作業です。成功したときの喜びは格別で、土づくり・作物づくりへの理解も深まります。
✅ 最後に一言
初めてでも、少量から気軽に始めることができます。ぜひご自身の環境に合わせた形で、「自家製鶏糞堆肥作り」に挑戦してみてください。
きっと、家庭菜園やガーデニングがさらに楽しく、実りあるものになるはずです。

